実演者の権利を守り、地位向上について考えます

委員による意見・提言等

<生成AIを使用した性的ディープフェイク作品に関する提言>

実演者地位向上委員会

委員 園田 寿

 委員 高山 佳奈子

委員 要 友紀子

委員 平 裕介

委員 亀石 倫子

委員 守 如子

 昨今、生成AIを使用した性的ディープフェイク作品が増加しており、出演者から無断で顔と身体を使用されたなどの相談事例も報告されています。当委員会は本問題に関して検討を重ねた結果、実演者の権利を著しく侵害する可能性があると重く受け止め、実演者の団体である一般社団法人映像実演者協議会に対し、以下の通り提言いたします。

 性的ディープフェイク作品について、本質的な被害は単なる社会的評価の低下(名誉毀損等)にとどまらず、出演者が「どのような行為を人に見せるか」という「性に関する自己決定権」を侵害される(おそれがある)点にあります。 AV出演被害防止・救済法(以下AV新法)においても、出演者の性に関する自己決定権が保護法益として明示されており、性的ディープフェイク問題においても、この自己決定権を正面から守るための規制や対策を講じるべきです。

 法的な側面から考えますと、著作権侵害、民法における不法行為、刑法における偽計業務妨害罪・名誉毀損罪、パブリシティ権の侵害、個人情報保護法違反、風営法違反となる可能性があり、また、AV新法との関係でも検討すべき問題があります。

・著作権侵害:動画の改ざんや無断転用は著作権侵害に該当する可能性が高く、人格権侵害としての側面も顕著です。立証責任の観点からも、著作権侵害とする対応が有効であると考えられます。

・不法行為:人格権侵害による民法上の不法行為として、民事での金銭請求や差し止めが可能となる場合があります。

・偽計業務妨害罪:フェイク作品の流通により正規作品の販売妨害や将来の出演機会が減少するおそれがあり、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

・名誉毀損罪:社会的評価の低下等による名誉毀損罪が成立する成立する可能性があります。ただし、技術的に精巧な作品の場合、必ずしも社会的評価が下がらないことも考えられ、その場合には、他の権利利益の侵害や法令違反の観点の検討を行うことが適当です。

・パブリシティ権の侵害:例えば「〇〇(出演者名)の未公開流出動画」などという名目で性的ディープフェイク動画を販売する、あるいは当該出演者の容姿を売りにしたコンテンツを配信するような場合には、当該出演者のパブリシティ権を侵害する可能性があります。

・個人情報保護法違反:SNSアカウントやWEBサイトを運営し、第三者への提供や販売などを目的としてデータを管理・作成している事業者(個人情報取扱事業者)の場合には、個人情報保護法違反とされ行政上の措置を受ける可能性があり、場合によっては刑事罰を受ける可能性もあります。

・風営法違反:WEBサイト等を通じて性的ディープフェイク動画を不特定多数に有料で配信・販売する行為を反復継続して行うなどした場合には、風営法に規定される「映像送信型性風俗特殊営業」に該当する可能性があり、その場合に無届で事業を営めば風営法違反となります。

・AV新法の解釈と改正:現行のAV新法における「出演」の定義(2条4号)に生成AIが含まれるかは解釈上の課題がありますが、同法の趣旨に基づき、実在の人物を特定できる事例については、その規制の対象とするような法改正等の議論も視野に入れるべきです。

 以上のことから、上記のことを踏まえた業界としての対応と専門家との連携が重要となります。本問題は技術的・法的に複雑なものであるため、性的ディープフェイク問題の専門家との連携を強化し、実態調査を継続的に行うことが重要と考えます。AV業界だけでなく、海外も含め幅広い事例や情報の収集に努め、時代の趨勢に合致した視点から検討することが必要です。その上で、出演者の安全確保と地位向上のため、関連事業者とも適切な距離を保ちつつ協働し、出演者が不当な侵害を恐れずに活動できる環境を整備することを目指すべきであることを提言いたします。

 以上

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