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委員による意見・提言等

各政党の大麻政策について

園田寿(甲南大学名誉教授)

1.はじめに

 2023年12月に大麻取締法と麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)が改正され、日本が医療用大麻へのゴーサインを出したとともに、他方では大麻を麻向法における「麻薬」に位置づけ、それまで処罰規定のなかった大麻使用行為を「麻薬施用罪」(最高7年の拘禁刑)として厳罰化した。

 このような大麻の医療使用解禁と規制強化のバランスについて、主な政党がどのような見解や政策に重点を置いているのかをまとめてみた。

2.各政党の考え方

(1)自由民主党

 今回の改正を主導したのが自由民主党である。同党は、この法改正で、大麻の医療使用を可能にする一方で、大麻使用を罰則の対象とすることで規制を強化するという両面からのアプローチを取った。すなわち、大麻に薬効を認めて難治性てんかん患者向けの医薬品利用を可能にしながら、他方で違法薬物のまん延防止を強化するというものである。

 また、神事や祭事に使われる伝統的な大麻草の栽培と、医薬品の原料とする栽培を区別し、それぞれ「第一種大麻草採取栽培者免許」(都道府県知事免許)と「第二種大麻草採取栽培者免許」(厚生労働大臣免許)を設けることで、適正な利用促進と厳格な管理を図るとしている。

(2)公明党

 公明党も自由民主党と同様に改正を推進し、医療用大麻の使用に道を拓く一方で、乱用による健康被害を防ぐための規制強化策を重視している。自由民主党と同じく、難病患者の声を受けて医療用大麻の使用を実現させ、他方でとくに若者への違法薬物まん延防止を急務と捉えている。

 インターネット上での密売や「大麻は無害」という「誤情報」への対策、学校での薬物乱用防止教育、水際対策の強化を訴えている。

 また、大麻草に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を「麻薬」として位置付け、有害性がほとんどないとされるCBD(カンナビジオール)と区別すべきだとした。一時「指定薬物」に定められたTHC類似成分を含む食品についても、難治性てんかんに限り特定臨床研究の枠組みでの使用継続を可能にするよう働きかけた。

(3)立憲民主党

 立憲民主党は、薬物問題に直接言及する政策は少ないが、薬物依存歴のある人を含む罪を犯した人びとの再犯防止と社会復帰支援の拡充を提言しており、刑事罰だけでなくその後の社会復帰支援を重視する姿勢に言及している。ただし、大麻の医療使用解禁や使用罪に関する具体的な見解が明確に示されているわけではない。

(4)国民民主党

 国民民主党の政策には大麻や違法薬物に関する直接的な言及は見当たらないが、「孤独・孤立対策」や「人づくり」政策を通じて、薬物乱用の背景にあるストレスや孤立といった社会的な要因に間接的に対処しようとしている。とくに若年層の孤独感の高さを問題視し、無料のセーフティネット拡充や相談体制の整備を掲げていることが特徴的である。また、「人づくり」を最重点政策とし、教育や子育てへの投資を通じて社会全体の生産性向上と国際競争力強化を目指しているが、これらが具体的にどのような「薬物教育」につながるのかは明確ではない。

(5)参政党

 参政党は、アメリカにおけるオピオイド危機、とくに中国からのフェンタニル密輸に関連して警鐘を鳴らしており、厳格な取り締まりの必要性を述べている。フェンタニル含有製剤の不適切な使用や不正流通に対する法執行機関による厳しい取り締まりのほか、医療機関や薬局での監視・報告の義務付けの重要性を論じている。

 また、オピオイド中毒に対する治療法の開発や支援・治療プログラムの拡充、国際的な対策や研究にも取り組むべきだとしているが、大麻の医療使用解禁と規制強化のバランスについては具体的な見解を述べてはいない。

(6)れいわ新選組

 れいわ新選組は、大麻取締法等改正案において、医療目的での大麻解禁を支持するが、「大麻使用罪」の新設と厳罰化には強く反対した。厳罰化は薬物使用を地下に潜行させ、治療の遅れ、差別・偏見の助長、社会復帰の妨げになると危惧している。

 また、厚生労働省の有識者会議における政府の議論誘導に疑義を呈し、大麻の有害性がアルコールやタバコよりも低いとする世界的医学雑誌『ランセット』の論文を引用し、「ダメ。ゼッタイ。」の標語に疑問を投げかけている。

 さらに、「大麻はゲートウェイドラッグ」、すなわち大麻がハードドラッグ乱用の入り口となるという仮説についても、覚醒剤の検挙人員減少データなどを挙げ、否定的な立場を取っている。

(7)日本共産党

 日本共産党も、れいわ新選組と同様に、「大麻使用罪」の新設と厳罰化に強く反対した。

 日本では薬物依存症の「犯罪」的側面ばかり強調され、予防・治療・社会復帰の体制が脆弱だと指摘し、「ただ断罪して社会から排除するやり方では、問題の解決ははかれません」と批判している。

 刑事罰に頼らない薬物政策である「ハームリダクション」の考え方を重視し、治療と福祉の抜本的拡充を政策の柱としている。具体的には、医療機関が薬物依存症者を受け入れる際の診療報酬の充実、治療・回復プログラムの開発、精神保健福祉センターの機能強化、民間リハビリ施設への公的支援、当事者や家族への偏見・差別をなくし社会復帰を支援する取り組みの強化を掲げている。また、違法薬物を的確に指定し、販売者等の取り締まり強化も進めるとし、危険薬物の検査体制の拡充、薬事監視員の増員、ネット販売・虚偽広告への規制強化などを提言している。

3.まとめ

 大麻の医療使用については多くの政党が容認する方向で一致しているが、「大麻使用罪」の新設と厳罰化については、自由民主党と公明党が乱用防止のために必要と主張する一方で、れいわ新選組と日本共産党が、厳罰化は問題解決を妨げ、人権侵害につながると批判し、反対の立場を取っている。この点が、各政党間の最も顕著な意見の相違点となっている。

 薬物政策において重要なことは、薬物問題を犯罪問題から切り離して医療(公衆衛生)問題として捉えることであり、薬物に関する科学的根拠、人権尊重、スティグマを生まないバランスの取れた情報提供に重点を置くことである。世界の流れは明らかにこの方向に向かっている。とくに日本の現状を見ると、薬物使用自体の薬理的リスクと、「犯罪歴がもたらす将来への悪影響」という違法薬物の最大の社会的リスクについても国民に正確に伝えることが重要である。このような意味では、筆者は、れいわ新選組と日本共産党の考え方を支持するものである。

【出典】

  • 自由民主党
    • 改正法が成立、大麻の使用が禁止に~「大麻グミ」成分も指定薬物に指定される~(自由民主党): https://www.jimin.jp/news/information/207240.html
    • 治療法のない患者に応える~大麻由来の医薬品、使用可能へ~(自由民主党): https://www.jimin.jp/news/information/206838.html
  • 公明党
    • 危険ドラッグ法案 衆院通過(公明党): https://www.komei.or.jp/news/detail/20141115_15486
    • 【主張】違法薬物 若者へのまん延防止が急務(公明党): https://www.komei.or.jp/komeinews/p310814/
    • 公明、医療用大麻の使用に道開く(公明党): https://www.komei.or.jp/komeinews/p382581/
  • 立憲民主党:
    • 政策集2025「法務」(立憲民主党): https://cdp-japan.jp/visions/policies2025/17
  • 国民民主党
    • 政策各論3. 人づくりこそ、国づくり(国民民主党): https://new-kokumin.jp/policies/specifics/specifics3
  • 参政党
    • 違法なオピオイド(アヘン)(参政党): https://sanseito.jp/news/o7474/
  • れいわ新選組
    • 【声明】大麻取締法等改正案に反対する理由(れいわ新選組): https://reiwa-shinsengumi.com/comment/19391/
  • 日本共産党
    • 薬物依存症(日本共産党): https://www.jcp.or.jp/web_policy/2024/10/202410-bunya30.html
    • 大麻 厳罰化効果ない/取締法案 参考人主張、倉林氏質問/参院厚労委(日本共産党): https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-12-02/ftp2023120215_04_0.html
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